8月に公表された、事業所得と雑所得の区分に関する所得税基本通達の最終版が明らかになりました。

「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募の結果について

当初は、収入金額300万円を基準として事業所得と雑所得の判定を行う内容でしたが、最終的な通達は次のとおりです。

(業務に係る雑所得の例示)
35-2 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。
⑴~⑻ 省 略
(注)事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。

事業所得と雑所得の判定においては、帳簿書類の保存の有無が要点となり、帳簿書類の保存がない場合には原則として雑所得。ただし、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる場合は除くという整理になりました。

一方、同資料の「国税庁の考え方」に下記のように記されている通り、事業所得の基本的な考え方についての変更ではない点に留意してください。

・また、今回の通達改正では、「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかにより判定する」ことを原則としつつ、社会通念での判定で事業所得に該当しない場合を明らかにしたものです。
・したがって、事業所得又は業務に係る雑所得に対する従来からの考え方に変更を加えるものではありませんので、税負担額が変更されるものではないと考えています。

【追記】
国税庁のHPにおいて、「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」という資料も公開されましたので、こちらもご参照ください。
この資料中には、事業所得の区分について、次のような例示が含まれています。

(注)その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存している場合であっても、次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断することとなります。
① その所得の収入金額が僅少と認められる場合
例えば、その所得の収入金額が、例年、300 万円以下で主たる収入に対する割合が 10%未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。
※「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。
② その所得を得る活動に営利性が認められない場合
その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます
※「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。