公認会計士の武田雄治先生から、新刊『決算早期化の実務マニュアル 第3版』(中央経済社)を献本いただきました。

本書は、2012年の刊行後、2016年の第2版をはさんで12年に渡るロングセラーであり、既に経理関係者において定番の1冊になっています。

上場企業の経理部門における普遍的な課題である決算早期化のノウハウがまとめられており、全体は5つの章から構成されています。

  • 第1章 決算早期化を実現している会社の特徴
  • 第2章 決算早期化を達成できない原因と解決策
  • 第3章 決算早期化を実現する経理の仕組み
  • 第4章 決算早期化を実現するアウトプット事例
  • 第5章 決算早期化を実現するためのプロジェクトの進め方

本書の値段3,190円(税込)は経理部員の2時間分の残業代以下です。本書を読めば、それ以上の効用が得られるのは確かでしょうから、まだお読みでない方には、ご購入をお勧めします。
一方、悩ましいのは既に第2版を購入されている方々です。そこで、第2版と第3版の違いについて細かくみていきましょう。

全体の章立ては第2版に準じていますが、第2版では各章ごとに説明していた主要論点を、冒頭の第1章において総括的に説明するように再編集されています。

その他の主な違いとして
各章の冒頭に全体像をつかむためのサマリーを追加
最終章において決算早期化の阻害要因を特定するためのフレームワークを追加

それ以外にも、本文中の様々な箇所がブラッシュ・アップされています。例えば、第4章中にある「リードシート作成の際のポイント」について第2版では次のようにまとめられていました(第2版 p146)。

それが、最新の第3版では、次のように整理されています(第3版 p157)。

小さな違いに感じるかもしれませんが、作業効率を考慮した知恵が加味されており、2版刊行から8年間の著者の経験が反映されています。これらを考慮すれば、あらためて購入する価値のある1冊といえましょう。

本書では、決算早期化の要諦として「森を見る視点」を持つことが強調されています。
「森を見る視点」とは「業務全体を見渡す視点」であり、その範囲は自社が行う決算書作成だけではなく、その先にある監査法人の業務までを含んでいます。そのため、事後の確認作業(=監査人による監査)の効率化も考慮して帳票類が設計されています。
したがって、本書の効用は、決算が早期化される会社自身以上に、その会社の監査人にまで及びますから、監査法人の方々が本書を購入してクライアントに贈呈するのも合理的ではないでしょうか。

(おまけ)
8年前に第2版のレヴューを当ブログに掲載した際に、資料データのファイル名の例示に「半角スペース」が使われていたため、ファイル名には「スペース」ではなく「_ (アンダーバー)」を使用した方が良いのではと書いたのですが、第3版では該当箇所がアンダーバーに変更されておりました(第3版 p159)。
老人の小言に対応していだきありがとうございます。

(この、ファイル名にスペースを使ってはいけないというルールは、かつてのMS-DOS時代の話であり、現代のWindows環境では昔話と思われている方も多いでしょう。しかし、近年、様々なクラウド環境の利用が増えた結果、ファイル名称によるトラブルも増加しています。また、マルウェア等の障害からのリカバリー時に、ファイル名の違いによって復旧できないケースもありますので、昔話といわず、ファイル名へのスペース使用は避けた方がよろしいかと思います)