本日、3月4日の新聞各紙にユニクロの全面広告が掲載されました。広告の主旨は次の2点です。

  • 3月12日から価格表示を消費税込の総額表示に変更する。
  • 消費税込の価格を現行の税抜価格に据え置く=約9%の実質値下げ

既に多くの方々の記憶から消えているかもしれませんが、本来、消費税法の規定により消費者向けの小売業の価格表示は消費税額を含んだ総額表示が義務付けられています(消法63)。

しかし、5%の消費税率を8%、10%へと2段階引き上げるにあたって、事業者の事務負担等を考慮して、平成25年10月1日から令和3年3月31日までの間に限り、総額表示と税抜価格表示の選択適用を認める特例措置が講じられていました(消費税転嫁対策特別措置法10)。
今月末の31日に特例の期限を迎えるため、各社とも準備に追われていたところですが、ユニクロは先手を打って3月12日から総額表示に切替えるとともに、消費税分の約9%の値下げを宣言したのです。

平成26年4月1日の税率5%から8%への改正時に、現行の総額表示を続けるか税抜表示へ切替えるのかは、各社、様々な思惑があったのですがユニクロが税抜表示への切替を公表したところから流れが大きく変わりました。

実際、8%に税率改正された平成26年4月当初の各社の価格表示は次の表のように様々だったのですが、その後、令和元年10月の10%への2度目の改正を経て、特例措置による税抜価格表示が主流になっていました。

今回は特例措置が廃止されるため、小売業としては総額表示に変更する以外に選択の余地はないのですが、特例の期限日である3月31日よりも前に切替を行うとともに値下げを宣言し、他社の機先を制するユニクロさんの手法は見事です。

というところでブログを締めたいところですが、IT実務に関わる私としては、こういう抜け駆けは勘弁してくださいよというのが本音です。今回のユニクロの施策をみて、当初の計画を変更する会社も出てくると思われますが、その業務負荷は末端の担当者に重くのしかかります。コロナ対応で緊急事態宣言が出ている現状でもありますので、価格表示と価格設定の変更は各社の当初計画通りに進めていただくことを願うばかりです。

さらに、余談でありますが、総額表示の強制は平成16年度の小泉内閣時に(突然)導入されました。表向きは欧州と同様に消費者保護が目的と説明されましたが、実態は、総額表示を導入することで将来の(小泉首相は在任中に税率改正しないと公言していた)税率アップ時の影響を企業努力で吸収させる意図があったと言われています。実際、今回のユニクロのように、小売業は税率アップ分を値下げまでして端数価格(980円や1980円など)を維持しようとします。しかし、平成16年当時と違い、現在の我が国は完全にデフレ状態にあり、デフレ脱却と反対の効果を生む総額表示の強制は、この機会に廃止又は特例を延長すれば良かったのではないでしょうか。