本日、平成23年度の税制大綱が内閣の閣議決定を経て公表されました。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/etc/pdf/221216taikou.pdf

本年も、会計システムに影響を与える論点をピックアップして解説していきます。

●固定資産の減価償却 200%定率法の導入 (p80:大綱ページ)
減価償却制度について、平成23 年4月1日以後に取得をする減価償却資産の定率法の償却率は、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.0 倍した数(現行2.5 倍した数)とします。なお、改定償却率及び保証率についても所要の整備を行います(所得税についても同様とします。)。
(注1)定率法を採用している法人が、平成23 年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度において、同日からその事業年度終了の日までの期間内に減価償却資産の取得をした場合には、現行の償却率による定率法により償却することができる経過措置を講じます。なお、その減価償却資産を適格組織再編成により移転を受けた法人も同様とします。
(注2)現行の償却率による定率法を採用している減価償却資産について、平成23 年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることにより、その償却率を改正後の償却率に変更した場合においても当初の耐用年数で償却を終了することができる経過措置を講じます。

減価償却システムの償却パターンを新たに設定する必要があります。
また、会計監査上、今回の税制改正をどのように扱うかについては、平成19年の税制改正時に公表された監査・保証実務委員会報告第81号の改訂を待つことになります。

●消費税仕入税額控除の改正 (p100)
② 課税売上割合が95%以上の場合に課税仕入れ等の税額の全額を仕入税額控除できる消費税の制度については、その課税期間の課税売上高が5億円(その課税期間が1年に満たない場合には年換算)以下の事業者に限り適用することとします。
(注)上記の改正は、平成24 年4月1日以後に開始する課税期間から適用します。

この改正は、先ほどの減価償却以上に、会計システムに影響を与えます。
課税仕入れの全額を仕入控除できない場合には、「個別対応方式」「一括比例配分方式」のいずれかを選択できますが、「個別対応方式」を採用する場合には、消費税区分の抜本的な見直しが必要になります。

対象企業の判断を「基準期間(前々事業年度)」ではなく「その課税期間」の課税売上高で行う点にも注意してください。消費税の課税区分は期中の取引ごとに設定しなければなりませんので、決算期末を迎えてから見直すことはできません。

また、現行の消費税法では、一括比例配分方式を採用した場合には2年間の継続義務(消費税基本通達11-2-21)がありますが、この通達が今後変更されるかも要注目です。

(個別対応方式と一括比例配分方式の詳細については、拙書「収益認識プロセスと会計の接点」 41ページをご参照ください)。

●消費税「仕入税額控除の明細」の義務化 (p100)
⑥ 消費税の還付申告書(仕入控除税額の控除不足額の記載のあるものに限ります。)を提出する事業者に対し任意に提出を依頼している「仕入税額控除に関する明細書」について、還付申告書への添付を義務付けた上、その記載事項の見直しを行います。
(注)上記の改正は、平成24 年4月1日以後に提出する還付申告書について適用します。

通常の企業では、既に添付資料として提出しているため問題ないと思いますが、記載事項がどのように見直されるのか気になります。

●遡及修正時の申告 (p82)
⑥ その他
イ 「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の導入に伴い、次の措置を講じます((イ)及び(ロ)については、所得税についても同様とします。)。
(イ) 陳腐化償却制度を廃止します。
(ロ) 耐用年数の短縮特例について、国税局長の承認を受けた未経過使用可能期間をもって耐用年数とみなすことにより、その承認後は未経過使用可能期間で償却できる制度とします。
(ハ) 確定申告書等の添付書類に過年度事項の修正の内容を記載した書類を追加します。

過年度遡及修正事項の多く(減価償却関係を除く)は手作業で対応するため、即システム化という話でもないでしょう 。(陳腐化償却を廃止することもないと思うのですが、どうなんでしょうか。)

●棚卸資産の切放し法の廃止 (p83)
ニ 棚卸資産の評価について、切放し低価法を廃止します。なお、平成23 年4月1日以後に開始する各事業年度においては、同日以後最初に開始する事業年度の前事業年度末の評価額をもって取得価額とする経過措置を講じます。

IFRS対応という視点からは、「切放し法」を廃止して「洗替法」への一本化ということになるのでしょうが、税法の方が一歩先に行っているような。

●法定調書のデータ提出の義務化 (p39)
法定調書の光ディスク等による提出義務の創設
支払調書、源泉徴収票、計算書又は報告書(以下「支払調書等」といいます。)を提出する場合において、基準年(その年の前々年をいいます。)に提出すべきであった当該支払調書等の提出枚数が1,000枚以上であるときは、当該支払調書等の提出義務者は、当該支払調書等の提出については、当該支払調書等に記載すべきものとされる事項を記録した光ディスク等を提出する方法又は当該事項を電子情報処理組織(e-Tax)を使用して送付する方法によらなければならないこととします。
(注)上記の改正は、平成26 年1月1日以後に提出する支払調書等について適用します。

これも、大企業においては既にデータ提出しているところが多いと思いますが、今後は義務化されることになりました。

本日は、ここまでですが、今後、新たな論点が見つかりましたら、適宜、当ブログでご紹介してまいります。