みずほ総合研究所 の広報紙 「BUSINESS TOPICS」 10月号に「消費税改正に備える税務処理とシステム対応」という記事を寄稿しました。

20130930

この広報紙は、中堅企業を読者対象にしているため、今回は特に、中堅企業において問題になる論点を中心に解説しています。
したがいまして、システムといっても汎用的なパッケージソフトの利用が前提になっています。

丁度、この原稿を書いている8月は、安倍首相が消費税率改正を検討する有識者会議の開催を指示したころでして、編集者と「税率上がらなかったら、この原稿ボツですかね?」と相談しておりました。
報道では明日(10月1日)に安倍首相が決断する そうですから、まだ、そのリスクは残っております。

私の原稿はどうでも良いのですが、今回の消費税改正の手続き上、最終判断を10月1日に下すのは明らかにおかしいです。
なぜなら、その日は消費税改正法で規定されている指定日だからです。

この指定日は税率改正に係る取引の安定を図るための措置と解されており、指定日前日(つまり9月30日)までに契約した請負契約等については旧税率が適用されます。

しかし、消費税の最終決定が、指定日以降になるのならば、この指定日に関する規定は取引の安定どころが単なる撹乱要因にしかなりません。
実際に住居の購入を考えていた人々は、今回の指定日前に契約すべきか否かの重大な決断をしなければなりませんが、その結論が指定日にならなければ分からないのです。

明日の発表を前に、特に混乱が生じていないのは、9月8日のオリンピック誘致成功の影響が大きいためです。
先日のオリンピック誘致に失敗したケースを想像していただきたいのですが、その場合、明日の発表はかなりのイベントになっていたはずです。

税率改正の決定は、税率改正の是非とは別の問題です。
私自身も歳出側にメスを入れずに税率を上げることに大きな疑問を感じますが、そのような議論は法案提出時または、もっと早い時点で行うべきことです。
税率改正の決定にあたって、首相が真剣に景気動向を考慮していたとしても、少なくとも1日でもいいから指定日前に発表すべきですし、それが単に対外向けのパフォーマンスというならば、あまりに不誠実です。

このような意思決定の遅れのツケを払わされるのは末端の実務に携わる我々です。
システム関係の方々におかれましては、今回の税率改正でトラブった際には、安倍首相の決断の遅れが主原因と堂々と主張していただいてよろしいのではないでしょうか。

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