このたび、拙書『この一冊ですべてわかる 会計の基本』が、2010年の刊行から17度目の増刷となりました。
これも、ひとえに読者、書店並びに日本実業出版社の皆様のご協力のおかげです。この場をお借りして御礼申し上げます。

本書は増刷のたびに制度改正にあわせた改訂を行うだけではなく、各章末に設けたブックガイド欄も見直しています。
以前から「税務会計」の章で山本守之先生の著作を紹介していたのですが、2020年の訃報を受け掲載書籍の見直しを検討していました。しかし、山本先生が監修されていた『法人税申告の実務全書』は、山本先生の志を継がれた多田雄司先生、藤曲武美先生の監修により継続して刊行されることがわかりましたので、山本先生を偲ぶ一文とともに差し替えを行いました。

紹介文のなかで、山本先生を「納税者の守護者」と形容したのですが、この「守護者(Guardian)」という単語は映画「ダークナイト」のラストシーンからお借りしたものです。


山本先生の著作「税金力」(中央経済社、2009年)の中に、演劇「ラ・マンチャの男」のセリフを引用した次のようなくだりがあります。

このなかでのキホーテのセリフに
「最も憎むべき狂気は、ありのままの人生に折り合いを付けて、あるべき姿のために戦わないことだ」
というのがある。幸四郎は27歳の初演の時から60歳になった今日まで、このセリフを胸に刻んで生きてきたという。
「ナルホド、先生は税理士がありのままの税制に折り合いを付けて節税手法を考えるよりも、税の専門家としてあるべき税制について発言すべきだと言いたいのですね」(「税金力」p187:太字は筆者加筆)

山本先生は、この言葉を実践し続け、土地譲渡損通算規定の遡及適用やストックオプションの給与所得判決などについても積極的に発言してきました。納税者の立場を守るために奮闘される山本先生の姿は、私の中でバットマンの活躍とかぶります。
ここで、あらためて山本守之先生のご冥福をお祈りします。

(また、今回の改訂を手伝っていただいた編集者が、偶然にも『法人税申告の実務全書』の担当の方でありまして、私の方が御礼の言葉をいただくという僥倖にもめぐりあいました。)