税理士の吉澤大先生から、新刊 『はじめての人にもわかる 金融商品の解剖図鑑』 を献本いただきました。

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世の中には様々な金融商品が、様々なセールストークとともに販売されています。
あまたの金融商品の中から、どれが儲かるものかを知ることは困難ですが、明らかに不利な商品を見分けることは可能です。
そのために、金融機関から独立した立場から、ポジショントークなしで個々の金融商品のメリット・デメリットを解説したのが本書です。

金融機関のセールストークの中には、ファイナンス理論や会計知識をまじえることで、顧客を煙に巻くような文言も見受けられます。

そのような誤解を生じがちな論点についても、次のようにズバリと解説しています。
例えば、毎月分配型投資信託については

「毎月分配をする仕組みのためにコストが高いのだとすれば、あえて複利の効果を減らしたり、自分のお金を払い戻すだけにわざわざ高いコストを支払う意味はありません。」(33ページ)

また、賃貸用不動産の節税効果については
「「減価償却費は、支出もないのに費用になる」「お金も払わずに所得が減って節税になるので、その分手許のお金が増える」などと言われることもあります。
しかし、実際には建物を取得する時点でまとめてお金を払っているものが時間を掛けて必要経費に算入されているだけで、「支出もないのに費用になるオイシイ経費」ではないのです。(96ページ)

本書の類書としては、ポジショントークをまじえずに金融商品を論評する山崎元氏の一連の著作があげられます。

最近、山崎氏がダイヤモンド・オンラインに投稿された記事に、金融商品選択の要諦をまとめていた部分がありましたので、参考に引用しておきます。
http://diamond.jp/articles/-/166719

『新社会人が絶対に手を出してはいけない「マネー3悪商品」』より

【マネーの判断ミスを避ける4原則】 

(1)他人(金融マンも、友人も)が確実に儲かると教えてくれる儲け話は、信用しない方がいい。特に金融機関は、本当に有利に儲かるなら、他人に教えずに、その機会を自分で利用するはずだ。 

(2)金融マンやロボアドバイザーのようなプログラムに、運用を「お任せ」したり、「相談」したりすることは、自分の状況を悪化させた上に手数料を払う愚行である。自分で判断できないことは、やらないと決めておこう。専門家に相談すると気が楽だという依頼心が隙を生む。 

(3)少なくとも「相談」の相手と、「商品を購入する」相手を分けることが肝心だ。また、金融マンでもフィナンシャルプランナーでも、プロの時間を使うと高くつく。人間から運用商品を買うと幸せにならない。彼らを、敬して遠ざけよ。 

(4)自分のお金の状況に関して、金融ビジネスを含む他人に情報を持たせない方がいい。特に、銀行はお金の動きを知っているので、銀行で運用商品を購入しないことが肝心だ。

金融商品に関する情報はセールスサイドから提供されるものに偏りがちですが、その中で独立した視点から商品の優越を語る両者の情報は貴重なものです。
個々の商品説明について両者の考えに大きな違いはありませんが、吉澤氏の著作は、本業である税理士という立場からの説明が詳しい点が特徴になります。

金融商品の税務上の有利不利を判断するためには、「分離課税」「総合課税」といった所得税法上の基本的な知識が必要になりますが、本書では「第5章 得する金融商品の税制を解剖する」として独立した章が設けられています。
近年はイデコ(個人型確定拠出年金)など、新しい制度も増えていますので、税金に関する知識を再整理しておくためにも、本章を一読しておくことは有益でしょう。

(本文とは関連ありませんが、私が読んだ山崎氏の著作の中では、この本が一番おもしろかったので参考にリンクを貼っておきます。
出版から既に12年を経ていますが就活中の学生さんには必読の一冊です。ただし、本音過ぎて、この本を読むと就職したい会社がなくなってしまうという副作用もあるので、ご注意ください)

【書評】『金融商品の解剖図鑑』