平成23年6月22日に、平成23年度の税制改正法案が成立しました。(国会を通過した法案の正式名称は「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」と、大変長いものです)。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm
今回の税制改正は、東日本大震災の影響を受け、震災前に国会提出されていた改正法案とは、大きく異なる内容になっています。
当初の目玉であった下記のような主要改正は見送られています。
・法人実効税率の引下げ
・減価償却制度の見直し
一方、消費税法の仕入税額控除の計算方法が変更されており、これは、既存会計システムに影響を与えるため注意が必要です。
問題になるのは、以下の条文です。
消費税法 (仕入れに係る消費税額の控除)
第30条 第2項
前項の場合において、同項に規定する課税期間における課税売上高が5億円を越えるとき、又は当該課税期間における課税売上割合が100分の95に満たないときは、同項の規定により控除する課税仕入れに係る消費税額及び同項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額(以下この章において「課税仕入れ等の税額」という。)の合計額は、同項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める方法により計算した金額とする。
一 当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び当該課税期間における前項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下この号において「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされている場合 イに掲げる金額にロに掲げる金額を加算する方法
イ 課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額
ロ 課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額
二 前号に掲げる場合以外の場合 当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法
(赤字が今回改正部分)
従来、課税売上割合が95%以上の場合には課税仕入れの全額を仕入税額控除できましたが、今回の改正により、課税期間の課税売上高が5億円(その課税期間が1年に満たない場合には年換算)については、全額控除は認められず、個別対応方式(消費税法第30条第1号)か一括比例配分方式(消費税法第30条第2号)のいずれかの方法を採用しなければなりません。
この改正は、平成24 年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
条文中の「課税期間」は、その事業年度を指しており、消費税法における「基準期間」(その事業年度の前々年)とは異なりますから、5億円を超えた年度から即、適用対象になります。
合わせて注意していただきたいのは、消費税法第30条第5項については、改正は行われていません。
消費税法
第30条 第5項
第2項又は前項の場合において、第2項第2号に定める方法により計算することとした事業者は、当該方法により計算することとした課税期間の初日から同日以後2年を経過する日までの間に開始する各課税期間において当該方法を継続して適用した後の課税期間でなければ、同項第1号に定める方法により計算することは、できないものとする。
したがいまして、一括比例配分方式を採用した場合には、従来通り、2年間の継続適用が求められます。
今回は、取り急ぎ、根拠条文について確認しましたが、通常の事業会社の方々にとっては、見慣れない用語の連続だと思われますので、次回は、個別対応方式と一括比例配分方式の内容について説明していきます。
【追記】
消費税の基本から95%ルールの改正まで、関連するサブシステムへの影響も含めて解説するセミナーを開催します。
『販売・購買管理の基礎とシステム設計入門』
2012年 3月15、16日 ソフト・リサーチ・センター主催
http://www.src-j.com/index.html (月別一覧から検索してください)
P.S お急ぎの方は、拙書「収益認識プロセスと会計の接点」の41ページ。または「ビジネスプロセスと会計の接点 増補改訂版」の59ページに、個別対応方式と一括比例配分方式について説明しておりますので、ご参照ください。
「改正消費税 個別対応方式と一括比例配分方式 その1」へのコメント
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