日本実業出版さんから、 リーダーやニッチャーでなくても勝ち残る 「フォロワー」のための競争戦略」 を献本いただきました。

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先日の土井英司氏のメルマガ 「ビジネスブックマラソン」 でも取り上げられていましたので、興味を持たれていた方もいらっしゃるでしょう。

作者の手塚貞治氏は日本総合研究所に所属されており、日本実業出版社の 『この1冊でわかる 経営戦略の基本』 も監修されています。

固めの装丁とタイトルから、学術的な戦略本のイメージを持たれるかもしれません。

しかし、作者が想定している「フォロワー」 企業は、
「一言で言えば「普通の企業」のことです」(「はじめに」より)。

本書の目的についても
「「普通の企業」がゴーイングコンサーンとして持続的成長を続けることを第一義にとしています」 (「はじめに」より)
と述べられています。

一般の戦略論は、「リーダー」や「ニッチャー」といったトップ企業や先進企業を対象にしたものが多いのですが、本書は、世の中の大多数を占める
「フォロワー=普通の企業=その他大勢」
がとるべき戦略をテーマとしている点が他誌と異なります。

本書では、その方法論を 「リスクヘッジ競争戦略」 と呼び、具体的には以下の12種類の類型に整理しています。

【競争回避】
1同業集積 2提携棲み分け  3同業資産活用4 残存者利益獲得

【顧客ロイヤリティ】
 5 直接顧客密着 6 間接顧客浸透

【持たざる強み】
7 持続的ローコスト 8 情報仲介 

【ポートフォリオ】
9 顧客ポートフォリオ 10 ブランドポートフォリオ 11社員ポートフォリオ

【試行錯誤】
12 高速回転

どの章も、具体的な会社事例とともに解説されていますので、一般の方々も読みやすい編集になっています。

私が本書を読んでいて気になった点が2つあります。

ひとつは、12の戦略の中に「残存者利益獲得」が挙げられていますが、これは戦略の結果として、そのような状況が生じるのですから、敢えて12個の戦略に含める必要はないのではないでしょうか。
ただし、その点については作者も認識しているところであり、「安易にとるべき戦略ではありません」(p86)と注意を促しています。

もう1点は、「提携棲み分け戦略」の事例として、セブン&アイHDのヨークベニマルが挙げられている点です。
既にセブン&アイHDの100%子会社になった現在、グループ内で地域別の棲み分けをするのは当然であり、これはヨークベニマルの戦略ではなくセブン&アイHD側の戦略としてとらえるべきではないでしょうか。
むしろ、ライフとヤオコー(こちらは、本書内では戦略5 直接顧客密接戦略の事例として取り上げられています)の提携,、またはイオングループの茨城県域のスーパー カスミの方が「提携棲み分け戦略」の事例に近いと思いました。

最後に、繰り返しになりますが、題名をご覧になられて「俺はフォロワーじゃないから」と思われた方も、得るところの多い1冊です。

読まず嫌い(?)は損をしますので、ご注意ください。


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