先日、ご紹介した、「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」(以降「取扱い」と記す)を読んでみたものの「言っている意味がわからない」といったご意見をいただきました。それも、ごもっともですので、今回は、若干の補足をしておきます。

この「取扱い」を読みこなすためには、会計の全体構造を理解しておく必要があります。会計は「会社法」「金融商品取引法」「税法」という3つの法律から成っており、特に税法にもとづく「税務会計」は、「会社法」と「金融商品取引法」の定める通常の会計(ここでは、これを「企業会計」と呼びます)とは異なるものと考えられています。

したがって、「取扱い」における議論の前提として、「企業会計」と「税務会計」における減価償却は、本来、まったく別物という考えかたあるわけです。
その、本来別物である「税務会計」による減価償却を、「企業会計」における減価償却として「監査上容認する」というのが「取扱い」の主旨になります。

従来、日本における会計慣行では、「税務会計」にしたがって計算した減価償却費を、「企業会計」上のものとみなして処理するのが通常ですから、実務に携わっている方でも、この2つの会計領域の違いを認識しづらいのです。

反対に、両会計の違いが顕在化する例としては、減損会計があります。「企業会計」上、必須の処理である減損会計は、「税務会計」上は認められていません。

少し、専門的な話になってしまいました。会計の全体構造をご理解していただくためには、拙書「SEが知っておきたい会計の落し穴」(中央経済社)9-21ページ(特に16ページの図)又は「ビジネスプロセスと会計の接点 増補改訂版」(中央経済社)18-26ページなどもご参照いただければ幸いです。