ダイヤモンド社の編集者からザイマニ氏の新刊『サンキー図で「お金の流れ」が1秒でわかる 見るだけ決算書』(ダイヤモンド社)を献本していただきました。
作者のザイマニ氏は財務分析サイト「ザイマニ|財務分析マニュアル」の主催者であり、視覚的に財務分析を行うために図解やツールを提供しています。
(Disclaimer:当方も初心者向けの決算書本を刊行しているためザイマニさんとは競合関係にあります。ただし、現在の出版業界においてはCompetitorというよりも厳しい業界を支えるCollaboratorと言えましょう)

本書の特徴は、サンキー図を用いて財務諸表を直感的に理解する点です。
サンキー図とは、環境会計やサプライチェーン関係の資料で良く使われるグラフですが、このグラフの名称が、その作者(Sankey氏)の名前を冠してサンキー図と呼ばれることを本書を読むまで存じ上げませんでした。

(出典:環境省「我が国の物質フロー図」)
本書では、このサンキー図を使って財務3表(B/S、P/L、C/S)を図解化し、さらには企業の財務状況を読み解いていくという斬新な試みが展開されています。

このサンキー図を利用した手法のメリットはセグメント情報とP/L(損益計算書)の結合にあります。
上場会社の場合、通常、複数の事業を行っていますが、損益計算書だけではその内訳がわかりません。それを補うために、事業ごとの損益状況の内訳表であるセグメント情報が注記されています。

セグメント情報 事例(フジ・メディア・ホールディング 2026年3月期 有価証券報告書)
そのため、損益計算書本体とこのセグメント情報の表の2つを参照しなければならないのですが、本書のサンキー図によるP/Lでは、最初の売上高の段階でセグメントごとの分解を行っているため一目でセグメント情報と売上高の関係を理解できるのです。
さらに、本書でサンキー図の内容を学べば、ザイマニ氏のHP上の「サンキースタジオ」で、自らサンキー図を作成できるインタラクティブな仕組みも用意されています。
本書の中で1点、気になったのはB/S(貸借対照表)の表現です。B/Sについてもサンキー図を使って図解されています。P/LとC/Sはフロー、B/Sはストックを表わすという性質の違いについては冒頭でしっかり説明されているのですが、このサンキー図の性質から、どうしてもフローをイメージしてしまいます。
特にB/Sの場合は右側の負債が資金の「調達」、左側の資産が資金の「使途」を表わすため、お金の流れとしては右から左のイメージですが、サンキー図は原則左から右に流れを表わすため実際のお金の流れとは逆の感覚が生じます。

ただし、本文中ではB/Sを右側と左側にわけて丁寧に解説されていますので、図を見るだけではなく、本文を読んでいただければ杞憂に終わる論点かと思われます。
私が、内容以上に気になったのは副題にある「1秒でわかる」の一文です。
我々の世代ですと、「1秒」と聞くと小宮一慶氏の『「1秒!」で財務諸表を読む方法』を連想します。
この小宮氏の「1秒!」シリーズは2008年の刊行から25万部を超えるベストセラーですが、どちらの書籍がより早く決算書を読めるのでしょうか。

(先ほど、Amazonで確認したところ、なんと『「1秒!」で財務諸表を読む方法』は、18年前の刊行にもかかわらず、今年の3月に「決定版」として改訂版が発売されていました(!)当方は、2008年刊行の初版しか読んでいない点をご了承ください)
この財務諸表の「ホコタテ」対決は、時間だけで勝負するならサンキー図で表現している本書の圧勝でしょう。
小宮氏の書籍のネタをばらしてしまいますと、小宮氏の書籍では、
「私が財務諸表を1秒で見るならば、まず流動比率をみる」
というのがオチになっています。
流動比率は流動資産÷流動負債で算出しますが、暗算ができる方でも、これを1秒で計算するのは無理でしょうから、財務3表を図解化した本書に軍配があがります。
(蛇足)
ちなみに、私の提唱するB/S似顔絵分析法ならば、流動比率は左眉(流動資産)と右眉(流動負債)の相対的な位置を意味し、右眉が上にあるほど安全性が高い(=流動比率が大きい)とわかります。計算不要ですので流動比率だけならば「1秒」以下でOKです。

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