公認会計士の白井敬祐先生から、新刊「生成AI×経理・会計実務入門」(日本実業出版社:以降「生成AI」)を献本していただきました。

白井先生は昨年末に初心者向けの入門書「会計が面白いほどわかるミステリ 決算書に隠された7つの罪」を刊行されていますが、今回の書籍は経理担当者向けの実務書です。
本書は、日本実業出版社の月間「企業実務」における連載を再編集したもので、次のような構成になっています。
第1章 経理の生成AI導入の基本
第2章 日次業務×生成AI
第3章 月次業務×生成AI
第4章 年次業務×生成AI
第5章 その他業務×生成AI
日次業務の章では請求書処理、経費精算、月次業務では売掛金・買掛金管理、年次業務では開示チェックなど、主要な経理業務における最新AIの利用法が紹介されています。
AI関連のビジネス書は既に多くのものが刊行されていますが、経理業務に限定した書籍は限られています。
そこで、今回、比較対象としてとりあげるのは、マネーフォワードの執行役員をつとめる公認会計士の松岡俊氏による「経理×AI入門」(中央経済社:以降「経理AI」)です。(現時点で経理業務に関するAI書籍として黒崎賢一氏の「経理AIエージェント」があるのですが、こちらは具体的なAIソフトの利用法よりもAI活用の方法論を中心にまとめられているため比較対象から除いております)。

まず、両者の共通点として
・経理・財務の実務者向け
・各セクションが独立しており、必要な個所から読める
・実際のプロンプト事例が豊富に掲載されている
という点が挙げられます。
特に、両書籍ともAIに投入するプロンプト事例が記述されており、それらプロンプトはWebサイトからダウンロード可能になっています。したがって、書籍を購入した読者はすぐにAIの効果を実感できます。
これらプロンプトの中でも、
「生成AI」では、
・買掛金管理における三点照合(発注書、納品書、請求書の突合)(生成AI 116ページ)
・買掛金管理における振込データ作成(生成AI 118ページ)
「経理AI」では
・収益認識基準に基づく契約分析レポート(経理AI 87ページ)
・リース基準に基づく契約判定レポート(経理AI 88ページ)
の記述が興味深く、参考になりました。
次に両者の編集上の特徴をあげてみますと、「生成AI」の方は
・before/Afterの比較
サブタイトルに「Before/Afterでよくわかる」とあるように、AI導入前の業務と導入後の業務の流れの違いを図解しています。これは、AI導入は単なる手作業のITへの置き換えではなく、業務プロセスの抜本的な見直しを前提にしたものであるという作者の意思の表れです。(これがいわゆるDX思考)
・ターゲットの明示
各トピックが「中小企業向け」なのか「大企業向け」なのかを冒頭に星印で明示しています。一言に経理業務といっても、その内容は会社規模(特に有価証券報告書を作成する上場企業と非公開会社)によって大きくことなるため、この表記は読者の使い勝手を高めています。
一方、「経理AI」は
・ワークシート(チャート)の提供
各章末に章の内容を評価するためのワークシートやチャートが用意されています。例えば
第1章 AI導入に向けた「5つの壁」自社診断チャート
第4章 我が社のDX成熟度レベルチェックリスト
など、これらを利用することで、読み落としていたポイントを再確認したり、自らの業務との関連付けが可能になります。
書店にいけば両書籍は並べて置かれているでしょうから、書店で実際に手に取ってみてください。
AIの進歩は日進月歩であり、この1年のあいだにもChatGPT、Gemini、Claudeと覇権が次々に変わっています。現代においては、これら覇権争いの決着を待って動かないのが最大のリスクになっています。
(おまけ)
実は、上記の内容以上に私が気になったのは、いずれのタイトルにも「X」が入っていることです。
「生成AI X 経理・会計実務入門」
「経理 X AI入門」
以前、本のタイトルを編集者と検討している際に、ネット検索の邪魔(ノイズ)になるような文字は入れない方がいいと言われたことがあります。例えば「ー(ハイフン)」や「・(ドット)」などの文字です。
両者のタイトルに含まれている「X」という文字は「X(エックス)」なのか特殊文字の「×(バツ)」なのかわかりにくいので検索時のノイズになります。
しかし、今はブロウザの検索機能も発達して、AIを介した結果が冒頭に出てきますし、SixTONESをストーンズと読む時代ですから、こんなことは昭和世代の杞憂でありましょう。
「書評「生成AI×経理・会計実務入門」ーなぜそこにXがあるのかー」へのコメント
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