日本大学商学部特任教授の川野克典先生から新刊「経理DXの考え方・進め方Q&A」(中央経済社:以降「経理DX」と略)を献本していただきました。(Disclaimer:なお、川野氏は私がアーサーアンダーセンのコンサルティング部門在籍時の直属の上司であり、頭が上がりません)

本書はショーリ・ストラテジー&コンサルティングの顧問を勤める川野氏の編集のもと同社所属の内海正太郎氏、坂東太郎氏による著作です。
近年、DX(Digital Transformation)のかけ声のもとITを用いた経営プロセスの抜本的な見直しが進められています。本書は、その中でも経理・財務部門における実践的なアプローチを解説するものです。
全体の構成は次のとおりです。
第1章 経理・財務部門の現状と未来
第2章 経理・財務部門の業務変革
第3章 経理DX
第4章 経理・財務部門のAIの活用方法
第5章 経理DXにおけるパッケージソフトウェアの活用
前半の第1、2章において我が国の経理・財務部門の現状と問題点の総括。第3章で経理部門におけるDXの先進事例と失敗事例の解説。第4章では経理・財務業務における生成AIの具体的な事例の紹介。最終章の第5章では経理業務ごとに代表的なパッケージソフトを網羅的に紹介しています。
経理・財務部門の方々ならば会計の専門誌「企業会計」2025年8月号で「経理部門と経理DXの未来」という特集が組まれていたことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。その特集の冒頭において「経理部門変革を阻む部問題点と目指すべき方向性」を執筆されていたのが編者の川野氏です。この時の問題意識をもとに、具体的な対応策を書籍化したのが本書になります。
本書の白眉は第5章「経理DXにおけるパッケージソフトウェアの活用」でしょう。ERPのみならず固定資産、原価計算、経費管理といった経理関連業務ごとに主要パッケージの特徴がまとめられています。このように具体的なパッケージ名を出したうえで網羅的な記述を行っている書籍は専門書でも稀であり、執筆者陣の豊富な経験がなければできません。新しいパッケージ導入を検討されている経理、IT部門の方々にとっては極めて有益な情報です。
今回の比較書として、税理士・公認会計士の大野修平氏の「税理士のための生成AI活用 アイデア23選」(第一法規:以降「生成AI活用」)を取りあげます。

というのも、2025年度以降、AIが驚異的に発展してしまったためAI関連書籍は最新のものでなければ使い物になりません。そこで、今週刊行された本書を比較書とします。
「経理DX」が比較的大規模な法人向けであったのに対して、「生成AI活用」はタイトルにもあるように税理士や中小法人の経理業務へのAI利用を対象としているため、対象読者が異なります。
しかし、両者とも具体的なパッケージ(又はサービス)の特徴を解説している点が共通しており、これが読者にとっては有益です。
特に「生成AI活用」ではChat GPTを中心に、Gemini、Notebook LM、Genspark等について各サービスの特徴と強みをに基づいた利用法を紹介しています。(しかし、近年のAIはライバルの強みが数か月後には他社に取り込まれてしまうんですよね)。
したがいまして、両書とも、できるだけ早く入手して、即座にアクションに移すのがよろしいでしょう。
(おまけ)
「生成AI活用」は、作者の顔写真が表紙にあるようにソフトカバーでフレンドリーなビジネス書なのですが、定価が3,900円(税込4,290円)なので少々驚きました。これは、近年のインフレ、特に紙の原価高騰によるものと思われます。
最近、書店で、次に読む本を探していまして、平積みにされていた平凡社の文庫「暴力の考古学」を気楽に選んだのですが、レジで2,200円と言われて動揺しました。学芸書が高めの値段なのは承知していますが、本書は全ページで192ページ。さらに、本題の論文は100ページ(注釈を除けば実質60ページほど)しかありません。

同じ平凡社の文庫でも、最近刊行された半藤一利氏の「新版 B面昭和史 1926-1945」は全704ページ(無茶苦茶、厚いです)でも1,650円です。
書籍の原価は2割程度、そのうち紙代は10%程度でしょうから原価の問題というよりも、書籍にもダイナミック・プライシングが導入されたと考えるべきでしょうか。

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